健康寿命について考える

90歳になっても、自分の足で歩き、自分の体で動けるために

「健康寿命」という言葉を耳にする機会が増えました。

長生きすることは、もちろん素晴らしいことです。
けれど、ただ長く生きるだけではなく、できるだけ長く自分の足で歩き、自分の意思で動き、自分らしく日々を過ごせること。私はそこに、本当の意味での豊かさがあると思っています。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、健康寿命は主に「日常生活に制限のない期間の平均」として説明されています。つまり、単に病気がないということだけではなく、健康上の問題によって日常生活が制限されずに過ごせる期間のことです。

人生100年時代と言われる今、私たちが考えたいのは「何歳まで生きるか」だけではありません。
「何歳まで自分の足で歩けるか」
「何歳まで自分の体を思うように使えるか」
「何歳まで自分らしく暮らせるか」

ここが、とても大切なのではないでしょうか。


健康寿命に大切なものは色々ある。けれど一番は「習慣的な運動」

健康寿命を延ばすために大切なことは、たくさんあります。

食事、睡眠、ストレスケア、人とのつながり、心の安定、生活リズム。
どれも大切です。

けれど、私が一番大切だと感じているのは、習慣的な運動です。

体は、使わなければ少しずつ衰えていきます。
これは年齢のせいだけではありません。
使わない筋肉は弱くなり、動かさない関節は硬くなり、心肺機能も落ちていきます。

反対に、年齢を重ねても体を使い続けている人は、やはり動きが違います。姿勢、歩き方、階段の上り下り、疲れにくさ、表情の明るさ。日常の中にその差が出てきます。

WHOも、定期的な身体活動は心身の健康に大きな利益があり、心血管疾患、がん、糖尿病などの非感染性疾患の予防や管理、うつや不安症状の軽減、脳の健康、全体的なウェルビーイングに役立つとしています。

健康寿命を考えるとき、運動は「できたらいいもの」ではなく、「将来の自分への投資」だと思います。


私がトライアスロン、自転車、ランニングを続けている理由

私はトライアスロン、自転車、ランニングを続けています。

健康寿命のために、という理由ももちろんあります。
でも、それ以上に大きいのは、単純に「好きだから」です。

ここはとても大事だと思っています。

健康に良いからといって、嫌いなことを無理に続けるのは難しいです。
最初は頑張れても、義務感だけでは長く続きません。

私にとって、走ること、自転車に乗ること、泳ぐことは、体を鍛える時間であると同時に、自分と向き合う時間でもあります。

呼吸が上がる。
足が重くなる。
でも少しずつ前に進む。
昨日より少し長く走れた。
前より楽に坂を上れた。

そういう小さな変化が、体だけでなく心にも良い影響を与えてくれます。

運動の一番のポイントは、完璧にやることではなく、続けることです。
そして続けるためには、自分に合っていること、どこか楽しいと思えることを見つけることが大切です。


ウォーキングから始めるのはアリ。でも、それだけで満足しないことも大切

普段から運動していない人が、いきなりジョギングや筋トレを始めるのはハードルが高いかもしれません。

その場合、ウォーキングから始めるのはとても良いと思います。
外に出る。
太陽の光を浴びる。
足を動かす。
呼吸を感じる。
これだけでも、何もしないよりずっと良いです。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人は歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上、高齢者は1日40分以上行うことが推奨されています。目安として成人は1日約8,000歩、高齢者は1日約6,000歩です。

ただ、個人的には、ただのんびり歩くだけのウォーキングを「運動」と呼ぶには少し弱いと感じています。

もちろん、まったく動かないよりはずっと良い。
健康づくりの第一歩としては素晴らしい。
でも、健康寿命を本気で考えるなら、どこかの段階で「体に少し負荷をかける運動」へ進んでいくことが必要だと思います。

たとえば、少し息が弾むペースで歩く。
坂道を歩く。
階段を使う。
短い距離からジョギングを入れる。
スクワットなどで脚の筋肉を使う。

体は、適度な負荷があるから強くなります。
楽すぎる動きだけでは、現状維持はできても、年齢に負けない足腰をつくるには少し物足りないかもしれません。


ウォーキングを続けるなら、マインドフルネスウォーキングがおすすめ

もしウォーキングを習慣にするなら、私は「マインドフルネスウォーキング」が良いと思っています。

マインドフルネスウォーキングとは、ただ歩数を稼ぐのではなく、歩いている最中の感覚に意識を向ける歩き方です。

足の裏が地面に触れる感覚。
呼吸のリズム。
風が肌に触れる感じ。
空の色。
肩の力み。
頭の中に浮かんでくる考え。

そうしたものに気づきながら歩くことで、ウォーキングが単なる移動や運動ではなく、自分の心と体を整える時間になります。

2021年に発表された高齢者を対象とした研究では、マインドフルウォーキングが認知機能の維持に有望である可能性が示されています。ただし、これは初期段階の研究であり、今後さらに検証が必要な分野でもあります。

私たちは普段、頭の中でずっと何かを考えています。
過去のこと、未来のこと、仕事のこと、人間関係のこと。

だからこそ、歩く時間を「考え続ける時間」にするのではなく、「今の体に戻る時間」にする。
これはヨガにも通じる考え方です。

ヨガも、ポーズを取ることだけが目的ではありません。
呼吸に気づき、体の感覚に気づき、今ここに戻ること。
マインドフルネスウォーキングも同じように、日常の中でできる小さなヨガのようなものだと思います。


90歳でもしっかり歩ける体をつくるには、足腰を鍛えること

人生100年時代と言われる中で、私が大事だと思うのは、90歳になっても自分の足で歩ける体をつくることです。

そのためには、やはり足腰の力が必要です。

歩く、立つ、座る、階段を上る、買い物に行く、旅行に行く。
日常生活の多くは、足腰の力に支えられています。

足腰が弱ると、外に出るのが億劫になります。
外に出なくなると、さらに筋力が落ちます。
人と会う機会も減り、気持ちも沈みやすくなります。

つまり、足腰の衰えは、単に体力の問題だけではなく、生活全体の質に関わる問題です。

だからこそ、ジョギングや軽いランニング、階段、スクワット、自転車など、自分に合った形で下半身を使う習慣を持つことが大切です。

ランニングに関する研究では、ランニング習慣がある人は、走らない人と比べて全死亡リスクや心血管疾患、がんによる死亡リスクが低い傾向にあることが報告されています。もちろん、無理な走り方や過度なトレーニングは故障につながるため、自分の体力に合わせることが前提です。

大切なのは、速く走ることではありません。
長い距離を走ることでもありません。
自分の体力に合わせて、少しずつ足腰に刺激を入れることです。


筋肉は、年齢を重ねるほど大切になる

健康寿命を考えるうえで、有酸素運動だけでなく筋力も大切です。

若い頃は、多少筋力が落ちても日常生活で困ることは少ないかもしれません。
でも年齢を重ねると、筋力の差はそのまま生活の差になります。

椅子から立ち上がる。
床から起き上がる。
階段を上る。
重い荷物を持つ。
転びそうになったときに踏ん張る。

こうした動作には、筋肉が必要です。

筋力トレーニングに関するメタ分析では、筋力強化活動は全死亡、心血管疾患、がん、糖尿病などのリスク低下と関連していたと報告されています。

これは、必ずジムに行って重いバーベルを持ち上げなければいけない、という意味ではありません。

自宅でのスクワット。
かかとの上げ下げ。
椅子から立つ・座る動作。
軽いダンベル。
ヨガの立位ポーズ。
体幹を使うポーズ。

こうしたものも、続ければ立派な筋力づくりになります。

ヨガの良さは、筋力、柔軟性、バランス感覚、呼吸、心の安定を同時に整えられるところです。激しい運動が苦手な人でも、自分のペースで体を使うことができます。


「長く続けられる運動」を見つけることが一番大切

健康のために運動しようと思ったとき、多くの人は「何をやれば一番効果的か」を考えます。

ランニングがいいのか。
筋トレがいいのか。
ヨガがいいのか。
自転車がいいのか。
ウォーキングがいいのか。

もちろん、それぞれに良さがあります。

でも、最終的に一番大切なのは、自分が長く続けられるかどうかです。

どんなに効果がある運動でも、3日でやめてしまえば意味がありません。
反対に、少し地味でも、10年続けられる運動には大きな価値があります。

私の場合は、トライアスロン、自転車、ランニングが自分に合っています。
でも、すべての人に同じことをすすめたいわけではありません。

ある人にとってはヨガかもしれない。
ある人にとっては山歩きかもしれない。
ある人にとってはダンスかもしれない。
ある人にとっては水泳かもしれない。
ある人にとっては、まずは毎朝の散歩かもしれない。

大切なのは、自分の生活、自分の体力、自分の性格に合った運動を見つけることです。

「これなら続けられそう」
「少し楽しい」
「終わったあと気持ちいい」
「またやってもいいかなと思える」

その感覚があるものを選ぶのが、長く続けるコツです。


健康寿命は、未来の自分へのプレゼント

健康寿命を延ばすことは、未来の自分へのプレゼントだと思います。

今の10分の運動。
今の一歩。
今のスクワット。
今の呼吸。
今の姿勢への意識。

それらはすぐに大きな変化として現れないかもしれません。
でも、5年後、10年後、20年後の体を確実につくっていきます。

90歳になったとき、自分の足で歩けるか。
行きたい場所に行けるか。
好きな人に会いに行けるか。
自分の体を信頼できるか。

その土台は、今の習慣の積み重ねで決まっていくのだと思います。

健康寿命を考えることは、老後の不安を考えることではありません。
むしろ、これからの人生をどう楽しむかを考えることです。

体が動けば、行動範囲が広がります。
行動範囲が広がれば、人との出会いや経験も増えます。
そしてそれは、心の若さにもつながります。


まとめ:健康寿命は「動ける体」を育てることから始まる

健康寿命に大切なことは色々あります。
食事も睡眠も、心の安定も、人とのつながりも大切です。

でも私は、その中でも習慣的な運動がとても大切だと考えています。

まずはウォーキングからでもいい。
ただ、慣れてきたら少しずつ負荷を上げていく。
歩くなら、マインドフルネスウォーキングとして心と体に意識を向ける。
できる人はジョギングやランニング、自転車、筋トレ、ヨガなどで足腰を鍛えていく。

大切なのは、無理をすることではありません。
人と比べることでもありません。

自分に合った運動を見つけて、長く続けること。
そして、90歳になっても自分の足で歩き、自分の体で動ける未来を少しずつつくっていくこと。

健康寿命は、特別な人だけのものではありません。
今日からの小さな習慣で、誰でも育てていけるものです。

まずは、今の自分にできる一歩から始めてみましょう。

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